特集記事抜粋
 

特集「樹」 -巨樹の里・一字村を訪ねて-(2004年 冬号)
●特集「樹」 -巨樹の里・一字村を訪ねて
    ・1 一宇村桑平の四国一位の栃の木
    ・2 炭窯や工房も手作りで
●この人と吉野川
   「竹の声を聞く、川の声を聞ける子供を育てたい」
    ・美馬未来塾委員長、千葉 昭彦さん
特集
剣山のふもと
村を見渡す高台に立つ
樹齢数百年の巨木を訪ねた
豊かに枝を広げた姿は
歳経りてなお生命力に満ちている。

木にもたれかかり、幹を抱く。
木肌のぬくもり、しめった土の匂い、森の静寂・・・
抱かれていたのは私の方だった
 

剣山の北斜面、1000m級の山々に囲まれた一宇村は、全国的にも有数の巨樹の里です。
 村の面積の92%が森林という環境から、昭和中期までは村人のほとんどが林業に従事していました。人々にとって、樹は身近な友であり、生活の糧でした。人々は巨樹を「山の神様」として敬い、山仕事の安全を願って大切に祀ってきました。
 一宇村が「全国巨樹巨木林の会」の協力を得て、村内の巨樹の調査に乗り出したのは平成10年。日本一位のエノキをはじめ、四国一、県下一という巨樹が多く見つかり、平成11年7月に11本を村の天然記念物に指定、12月にはその内4本が県の天然記念物に指定されました。そして、平成16年9月、赤羽根大師の大エノキが国指定天然記念物に。驚いたのは村の人達です。「な〜んもない」と思っていた村に、日本一の貴重なものがあるその驚き、喜び、そして誇り……。
 一宇村教育委員会の日浦満彦さん(34歳)もそんな一人でした。
3年前に文化財担当になり、巨樹ツアーの案内人を務めるため、村の年寄りに教えてもらいながら巨樹を全部訪ね歩いたとか。苦労談や巨樹のエピソードをお聞きしながら、日浦さんに村を案内してもらいました。
 まずは「赤羽根大師の大エノキ」と呼ばれる日本一のエノキを訪ねました。手作りの看板に導かれて山道を上ること約5分、赤いのぼりが並ぶ大師堂の傍らにそびえるエノキに到着。幹周り8・7mと聞いてもピンときませんでしたが、実物を見て納得。まさに巨樹! 苔むした木肌やごつごつと太い根、大師堂を包むように広げた枝ぶりも見事で、荘厳な雰囲気が漂います。そして、樹齢800年の老木にもかかわらず、その姿のみずみずしさに驚かされます。
 白山神社のモミ、桑平のトチノキ、葛籠のヒノキ……次々と訪れたどの巨樹も、趣は違えど生命力に満ちていて、その姿に、村人と森との数百年にわたる共存の歴史を見る思いがしました。 
 巨樹案内人も育ち、年末から巨樹ツアーが行われています。ツアーは9:00出発、15:00帰着(予定)。参加費は5人まで定額5000円、1人増毎に1000円追加(保険料別)。希望日の10日前までに予約ください。
申込み・問合せは、一宇村商工観光課 TEL 0883-67-2111 まで。
特集2
「地元・池田町の山の木材を使って山を、町を、人を元気にしたい」と、林業を通した町おこしに
夢を描く林研クラブ・馬路「夢いっぱい」会(久保進会長、平成12年発足)を訪ねました。間伐材や廃材を使った炭の生産加工には特に力を入れています。オリジナル商品の「飾り炭」は、野菜や果物を原型のまま焼き上げたユニークなもの。消臭効果、マイナスイオン放出効果のあるインテリアとして、これから販売ルートを開拓していく予定とか。
この人と吉野川
古い寺院が立ち並ぶ美馬郡美馬町の寺町界隈の中で、一際立派な佇まいの安楽寺。千葉昭彦さん(58歳)は安楽寺副住職にして、町づくりグループ「美馬未来塾」の委員長さんです。
 「吉野川の竹はいいものなのに、時代に取り残され、悲鳴を上げている」と千葉さん。吉野川沿岸の竹は、藩政時代に人々を災害から守る水防林として植えられたものです。昔は、農具や生活用具作りに竹は必需品で、特に美馬町では、伝統工芸の和傘の原材料として大切に手入れされていました。しかし、現在は手入れされることもなく竹林は荒れ放題。訪れる人も少なくなっています。
 美馬未来塾では「竹に笑顔を取り戻してもらおう」と、一昨年から竹を活用した町づくりに取り組んでいます。竹林の間伐を行い、切り出した竹で竹垣、竹炭、食器や遊具などを作成したり、竹灯籠によるライトアップなど・・・。
 「竹の活用は、自然との共生というだけでなく、命を考えることに繋がります」と千葉さん。川や竹の声に耳を傾け、その存在意義を認められれば、きっと、人と人との繋がりも大切にできるはずだという、千葉さんの思いが伝わってきました。
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