特集記事抜粋
 

Vol.25 −特集「吉野川橋物語」−(2007年 春号)
竹林からのぞく光景に立ち止まった。
園瀬川の細い流れに架かったちいさな木橋。
木板を渡してワイヤーで結わえただけの
素朴な橋を親子が渡っていく。
渡った先に誰が待つのだろう、
少女の足どりは軽やかだ。
  ことん ことん こととん
  ゆら ゆうら ゆうら
なるほど、まさに「こんにゃく橋」。

思いのあるところに橋は架かる。
ちいさなこんにゃく橋が
今日もひとの暮らしを支えている。

【CONTENTS】
特集「吉野川橋物語」
Sketch of Yoshino River 〜 北島町
この人と吉野川〜 吉野川市美郷ほたる館 佐藤正勝さん ほか
特集「吉野川橋物語」

episode1 こんにゃく橋 〜川と共存する橋

 こんな橋がまだあったんだ、と、うれしくなりました。ここは徳島市上八万町田中。園瀬川に架かる小さな木の橋は「安原橋」といいます。橋の先には一軒の家。現役の生活橋です。
 近所で土木・解体工事の会社を営む福岡公典さんが、橋のメンテナンスを担当されていると聞いて、お話をうかがいました。
 安原橋は長さ31・05m。松杭の上に杉板を並べたシンプルな板橋で、大水が出ると流されてしまう「流れ橋」です。
 昭和37年頃からこの川を見てきた福岡さんによると、「このあたりは『足が速い』のが特徴。水が濁ったらすぐ逃げんとあかん。濁ったと思ったらあっという間に水位が上がって、水がドーン!とくる。そのかわり水が引くんも速い」とか。そんな川ですから、安原橋も大水のたびに流されます。でもなんのその。橋桁と橋板はワイヤーロープで連結して岸にしっかりとつないであるので、水が引いたらワイヤーをたぐり寄せて、また元の形に戻せばいいのです。
「自然に逆らわず、自然にやさしい橋やな」
と福岡さん。まさしくこの川の特性、地域の状態に合った橋だと言えます。そして周囲の景観にとけこむこのデザイン!
 取材の後、橋を渡ってみました。思ったとおり、歩くたびにゆらゆら揺れる「こんにゃく橋」です。川面を見ると、水に映った自分の影も楽しそうにゆらゆら揺れていました。


episode2 阿波中央橋 〜橋に懸かる思い

 吉野川市鴨島町知恵島と阿波市吉野町高畑を結ぶ阿波中央橋は、昭和28年(1953)5月20日に開通しました。技術の粋を集めた820.6mのワーレントラス橋は、戦後の永久抜水橋としては当時、日本最長でした。両岸の橋の親柱には世界的なアメリカの彫刻家イサム・ノグチによる男女の石像。橋の建設にかかわった人々は、朝に夕に、どんなに誇らしい思いでこの彫刻を見上げていたことでしょう。

 この付近は古くから阿波〜讃岐の交通路として開け、「源太の渡し」が通っていました。昭和3年(1928)、両岸の有志が集まって組合を作り、木造の賃取橋を架けることになりました。工事は善通寺師団工兵第十一大隊の架橋演習訓練として7月29日に着工し、8月8日までのなんと11日間で「記念吉野川中央橋」が完成しました。
 ところが、わずか一週間後、歴史に残る吉野川の大洪水で大半が流失。再び架橋したものの、その後も洪水のたびに大破しては補修の繰り返し。その木橋も人の通行ができる程度で、物資の運搬は約20kmも離れた穴吹橋か吉野川橋を利用するしかありませんでした。
 「吉野川をまたぐ抜水橋を」という両岸の人々の悲願は、記念吉野川中央橋から25年の歳月を経て、阿波中央橋の完成でようやく叶えられました。戦後まもなかったため資材調達は難航し、何度か工事は暗礁に乗り上げかけましたが、GHQ(連合国最高司令官総司令部)からの資材提供によりやっと完成にこぎつけました。橋建設の関係者は、GHQの善意に感謝し、平和への願いを込めて、親柱に日系二世のイサム・ノグチの彫刻を据えたのでした。開通式は十数万の人出で橋付近はあふれ返り、歓喜の声がいつまでもやむことはなかったとか。

 記事作成にあたって、阿波市市場町の坂本裕二さん(88歳)に記念吉野川中央橋の写真を提供していただきました。実は坂本さんは、工兵隊の一員として吉野川での架橋演習に参加したことがあるとか。当時は架橋工事は軍隊の架橋訓練として行われることが多かったようです。右写真のように、資材を積んだ船を上流から漕いできて、目的の地点に来ると船をワイヤーロープで固定させ、各船で門橋を組みます。測量も架設も、動く船の上での作業ですから、それはそれは大変だったそうです。
 今も昔も、そしてこれからも。大勢の人の思いをのせて、阿波中央橋は立っています。
この人と吉野川   その18  
 「西日本と東日本ではホタルの光る長さが違うんですよ。名古屋が境界線です。どちらが速いと思いますか?」そんな楽しいガイドでホタルについて教えてくれるのが、吉野川市美郷ほたる館の佐藤正勝館長さん(60歳)です。
 美郷にすむホタルは、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルなど5種類。昭和45年(1970)に旧美郷村全体が「ホタルおよびその生息地」として、国の天然記念物に指定されて以来、地域あげてホタルの保護に取り組んできました。美郷ほたる館はその拠点として平成12年(2000)にオープン。オープンに先立って、平成10年に住民や役場職員で「宝さがし探検隊」(棟本誠二隊長)を結成し、美郷の魅力の掘り起こしにかかりました。調査を進めるうちに、佐藤さんや探検隊のメンバーは、身近すぎて気付かなかった地域の魅力を再発見しました。古代遺跡にも似た段々畑の石積み、素朴な手打ちそば、釣り名人に炭焼き名人……etc。
 美郷ほたる館ではホタルについての展示や研究はもちろん、探検隊によって発掘された美郷の宝を紹介。また、ホタルが自然発生する環境を守るために、探検隊と共にホタル観察ツアー、河川清掃、炭焼き体験などさまざまな活動を行っています。
 5月に入ると佐藤さんの頭はホタルのことでいっぱい。
「今年はたくさん飛んでくれるかな…」
自然環境や気候に大きく影響されるので、こればかりはホタルのみぞ知る。ちなみに今年は「去年は台風が少なかったので大丈夫だと思いますが、水が少ないのがちょっと心配」とか。見頃は5月下旬〜6月上旬頃、6月上旬の土日にホタルまつりも開催されます。
 え? 冒頭の質問の答えですか? 答えは美郷ほたる館で。

吉野川市美郷ほたる館
住所/吉野川市美郷字宗田82-1
電話/0883-43-2888
開館時間/9:00〜16:30 ※5月20日〜6月20日は〜21:30(この間は無休)
休館日/火曜日(祝日の場合はその翌日)
入場料/高校生以上200円、小中学生100円
http://www.tcu.or.jp/misato/hotaru/

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