特集記事抜粋
 

Vol.27 ー特集「きれいな水をたずねて」ー(2008年 夏号)
【CONTENTS】
特集「きれいな水をたずねて」
Sketch of Yoshino River 「山城・大歩危・妖怪村」
この人と吉野川/ 吉野川交流推進会議会長 美馬光夫さん
吉野川流域イベント・レジャー情報 ほか
特集「きれいな水をたずねて」
四国一の水質を誇る吉野川水系きっての清流・・・穴吹川

 「四国一の清流」というキャッチコピーが、ずいぶん浸透してきました。水底まで透き通るその美しさを一度目にしたなら、看板に偽りなしと実感します。
 国土交通省四国地方整備局では、管理する四国の一級河川8水系21河川で毎月1回水質調査を行っています。穴吹川はこの調査で、水質汚濁の指標となる生物化学的酸素要求量(BOD)の平均値が全河川の中で最も低いという結果が出ています。しかも、平成7年から12年連続で! ちなみに平成18年の調査ではBODは1ℓあたり0.6㎖。2位には那賀川、3位に仁淀川(愛媛県・高知県)がランクインしています。
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 穴吹川は剣山の北東斜面に源を発する吉野川の支流です。山間部なので人家が少なく、生活排水や工場排水による水質汚染の心配がない、剣山系の原生林など自然が豊かに残っている、などの好条件はありますが、それだけで水質が守られているわけではありません。
 吉野川一斉清掃があった7月6日、穴吹川でも流域住民が河川清掃に汗を流しました。きれいに見える穴吹川ですが、それでも空き缶やペットボトル、紙くずなどがゴミ袋に1つ、2つ、3つ……。レジャーシーズンを前に念入りにゴミを拾いました。
 穴吹川の美しさをPRしようと昭和58年に始まった「穴吹川筏下り大会」も、夏の風物詩としてすっかり定着しました。今年は県内外から64チームがエントリー。選手とギャラリーの歓声が川面にこだましました。
 ハード面での取り組みもあります。旧・穴吹町では平成10年度から穴吹川中流域の下水道事業に乗り出し、農業集落排水を整備しました。平成18年からは美馬市が下流域の整備を進めています。こういった行政の取り組みと、地域住民の清掃活動などが両輪となって、穴吹川の水質を守ってきたのです。
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 平成19年度の水質調査の結果発表は8月下旬。美しい穴吹川を見てると、発表が待ち遠しい気がします。



名酒を醸す竜ヶ岳の名水・・・松尾川

 「うちの酒の仕込み水です」と飲ませてくれた水があまりにおいしかったので、三好市池田町の酒蔵「三芳菊」六代目当主にして杜氏である馬宮亮一郎さん(41歳)に案内していただき、その水を訪ねました。
 国道32号から祖谷口橋を渡って県道32号へ。標示に沿って出合から山道を上ること約30分、道はいよいよ細くなり、目の前には高さ400m、幅4㎞、東洋一と言われる断崖「竜ヶ岳」がそそり立つ。そんな山の中なのに、取水口の周辺にはトラックや車が何台も停まり、ポリタンクを手にした人達が順番待ちをしています。
 地元では知らない人のいない竜ヶ岳の水。検査でも大腸菌などの雑菌は検出されず、「そのまま飲める水質」と役場の方も太鼓判。香川、愛媛からも水を汲みに訪れる人が絶えません。
 水汲みの順番を待ちながら馬宮さんにお話を伺いました。馬宮さんが杜氏に就任したのは平成13年。伝統や慣習にとらわれない新しい酒を造りたいと、原料の見直しから始めました。
「酒造りは酵母、水、米のバランスが大事。特に、酒の80%は水分ですから水は重要です」
米は全国的にも有名な酒造好適米・阿波山田錦、酵母も徳島産、そして水は「吉野川の伏流水とかいろいろ試してみたけれど、ここの水がいい」と、竜ヶ岳の水を使っています。
 昔から吉野川流域、特に西部の池田町では吉野川の水を使った酒造りがさかんでした。一般に酒造りには硬水がいいとされていますが、吉野川の水はやや軟水。では、竜ヶ岳の水は?
「超軟水(笑)、酒造りには向いていないとされる水です。でも、使ってみたらよかったんです。発酵がゆっくり進み、やわらかい味になる」
 日本酒の仕込みは10月から4月。仕込みに入ると、厳寒の雪の積もった山道をトラックを駆って3日に明けず水汲みに通います。たいへんな労力ですが、納得のいく酒造りのためです。
 やっと順番が回ってきました。手を切るような冷たい水を口に含むと、山の涼気が体の中を駆け抜けました。
「地元の人の話では、この水は岩から50年かけてしみ出しているそうですよ」
50年前に降った雨が、硬い岩盤で一滴一滴濾されて、名水となる。今降った雨は、50年後も名水になり得るだろうか? そんなことを思いながら帰途につきました。
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 夜、お土産にいただいた阿波山田錦特別純米生原酒をキリリと冷し、竜ヶ岳の水をチェイサーにいただきました。ああ、甘露、甘露!


http://www.miyoshikiku.co.jp
この人と吉野川 その20
吉野川交流推進会議の新しいリーダーに
舵取りの方向をうかがいました

吉野川交流推進会議会長
美馬 光夫さん


美馬光夫さん(70歳)が代表取締役を務める七福興業株式会社は、眉山のふもとにあります。眉山の緑、新町川のきらめき……徳島市のシンボルともいえる景観を毎日眺めながら、県内外の企業を対象に保険代理店業務、不動産業務などを行っています。
 美馬さんは徳島市出身。佐古川のほとりで育ちました。お母さんの実家の石井町を訪ねた時には、吉野川の水辺で遊んだ思い出もあります。
「私が子どもの頃は小学校にプールがなかったので、夏には先生に連れられて、みんなで今の吉野川のゴルフ場のあたりへよく行きました。それが吉野川での泳ぎ初めです(笑)」   
幼かった美馬さんには吉野川がさぞ大きく見えたことでしょう。
 社会に出てからは、転勤で日本各地に住みました。
「川には縁があるんですよ。新婚生活を始めたのは西宮の武庫川のほとり、ゴルフを始めたのは淀川の河川敷。東京にも長くいたので多摩川もなつかしいですね。福井には足羽川、札幌にも豊平川という川がありました」
次々と大河川の名が挙がります。どの町にもどの川にもそれぞれ趣がありますが
「やはり吉野川が一番。とにかく景観が美しい。東西にゆったりと流れ、水も豊か。山並みとの調和もいいですね」
と、美馬さんは感慨深げに語ります。治水の歴史を語る第十堰、竹林繁る中流の河岸、奇岩の連なる美濃田の渕、大歩危・小歩危の大峡谷など、流域の風景は変化に富んでいます。県外出張の多い美馬さんを優しく迎えてくれるのも、やはり吉野川。特に、北岸から眉山をバックにした吉野川を目にすると、『ああ、帰ってきたなあ』とほっとするとか。
 吉野川交流推進会議発足から十年。強いリーダーシップで会議を引っ張ってこられた住友俊一前会長から、バトンを託された美馬さん。
「住友会長の築かれたレールを受け継いで、活動を発展させていきたい。県外へのアピールも必要です」と、力強く語ります。
「JR四国で吉野川の鉄橋を渡ると、吉野川橋が下流に見えますね。あの橋は架けられた当時(昭和3年)は東洋一の橋だったんですよ。そんな車内アナウンスを入れたらどうかと思うんですよ。吉野川や徳島のPRになると思いませんか?」
ユニークな着眼点と発想で、会議に新風を吹き込んでくれそうです。


YOSHINOGAWA NEWS
平成20年度総会開催

 平成20年度吉野川交流推進会議総会を5月29日、阿波観光ホテルで開催しました。多数のご出席のもと、新しい発想を盛り込んだ今年度の事業計画等を協議いただきました
 また、発足から10年にわたって、吉野川交流推進会議の活動を牽引してこられた住友俊一さんから、美馬光夫さんへ会長のバトンが渡されました。住友前会長さんには、会議より感謝状をお贈りしました。今後ともご指導・ご支援くださいますようお願い申し上げます。



新規事業も盛りだくさん!どんどんご参加ください

【交流事業】
◆アドプト・プログラム吉野川の推進
    「アドプト完全宣言」実現に向けて、活動の輪を広げていきます。
◆親子体験事業の実施
◆吉野川ブック「川はともだち」の作成・配布
◆地域イベントとの交流事業の実施
◆流域間交流事業の実施
◆透明度の向上を目指して
    「透明度プラスアルファ運動」として、各種活動を展開します。 
◆インターネットによる交流事業の実施・充実

【情報発信事業】
◆機関誌「四国三郎吉野川」の発行
◆吉野川の写真募集
    著作権フリーのフォトライブラリーを作成。詳細は裏表紙に。
◆各種イベントで吉野川の魅力をPR
◆ホームページの充実による情報発信会員の募集
    賛助会員を年会費制(年間千円)に変更し、「436(シコクサブロー)人」を目標に募集キャンペーンを実施。新規正会員も募集。

【10周年記念事業】
◆シンボジウムの開催(11月中旬)
◆キャッチコピーの募集
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