特集記事抜粋
 

Vol.28 ーそらの郷へー(2009年 夏号)
【CONTENTS】
特集「そらの郷」
Sketch of Yoshino River「撫養航路を行く」
吉野川耳より情報
吉野川ニュース
古民家、段々畑、人のぬくもり……日本の原風景がここにある
「落合集落」
 落合集落は東祖谷のほぼ中央、祖谷川と落合川の合流点から、高低差390mの急斜面に沿って広がる。江戸中期から昭和初期に建てられた民家約70戸が山肌にへばりつくように点在し、段々畑や古い石積みも多く残っている。
 平成17年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、以来、知られざる眺望スポットとして脚光を浴びている。地元では平成16年に協議会を結成して、建造物の保全や観光客への対応、そして重要伝統的建造物(※以下、「重伝建」と略)を生かした町づくりに取り組んでいる。 
 落合重要伝統的建造物保存協議会会長・南敏治さんの家は、集落を見渡す標高740mの高所に立つ。
「茅葺きの家は、夏涼しいて、冬ぬくいんよ」と南さん。家の中は冷房もないのに、さらりと涼しい。高く切り立った茅葺き屋根、部屋の中央には囲炉裏が切られ、黒く燻された栗の柱が年代を感じさせる。安永9年(1780)の棟札が発見された、集落のなかでも古い重伝建だ。屋根の葺き替えや増築、補修など手を入れながら、230年にわたって代々大切に守り伝えてきた。
「昔はどの集落も皆、自分達の茅場を持っとった。今はだいぶ減ったけどな…。茅を刈るんは旧暦10月の『亥』の日って決まっとる」と南さん。茅場の保全、葺き替え、土壁を雪から守る「ひしゃぎ竹」作り、石積み作業など、伝統技術を継承するために地域ぐるみで取り組んでいる。
 また、三好市が進めている中・高校生の修学旅行の受け入れにも、積極的に協力している。古民家に民泊し、茶摘み、そば打ち、炭焼きなど、祖谷ならではの農業体験をしてもらう。高齢化、過疎化が進む山里に、外から人々が来てくれるのはうれしいこと。特産品を開発して、地元の活性化につなげていきたいと語ってくれた。



■INFORMATION
住所/三好市東祖谷落合
交通/JR阿波池田駅から四国交通バス久保行きで1時間45分、落合下車
車/井川池田ICから国道32号〜県道45号・32号〜国道439号経由で約1時間45分
問合せ/三好市観光課 TEL:0883-72-7620
日本の文化を守り、地域活性化の拠点に。アレックス・カー氏の桃源郷
「ちいおり」

 西祖谷のかずら橋から車で20分、標示を目印に右折し、くねくねと細い山道を上ること10分。日当りのいい斜面に立つ茅葺き屋根の古民家にたどり着く。
 「ちいおり」は、東洋文化研究者として著名なアレックス・カー氏が所有する家であり、古民家の修復・保全とそれを活かした地域活性化活動に取り組む彼の日本での活動拠点のひとつだ。築300年の古民家は、周囲の自然にとけこむようにたたずんでいる。ふすまを取り払って、風と光をたっぷり招き入れた室内には、日本各地で蒐集した調度品が配され、氏の美意識がすみずみにまで行き渡っているのを感じる。よけいなものはなにもない。ゆったりと時間が流れているような空間だ。
 アレックス氏が初めて祖谷に入ったのは1971年。エール大学で日本学を学んでいた氏は、日本一周旅行の最後に立ち寄った祖谷の風景に魅せられ、東祖谷の古民家を購入。「ちいおり」と名
付けて修復・再生に取り組み始めた。この経緯や地元との交流、日本、そしてアジアへと拡がっていく氏の活動は、著書『美しき日本の残像』で知ることができる。この本は数カ国語に翻訳され、大きな反響を呼んでいるとか。
 現在、庵は2007年にスタートしたNPO法人「ちいおりトラスト」により運営されている。見学客の対応や地域行事への参加、施設の維持などは、アレックス氏の留守を預かる二人のスタッフが行っている。メディアで紹介される機会が増え、見学希望者は増える一方。その半数以上が外国人というのも驚きだ。
 施設の老朽化が進み、特に屋根の葺き替えは緊急の課題。しかし、葺き替えには多くの費用と人手が必要で、まず何より2000束という大量の茅を確保しなければならない。2011年春には屋根の総葺き替えと、家の大補修を行う準備を進めている。地域をまきこんだ大事業になりそうだが、それこそが、庵トラストの目指す活動のあり方なのだろう。


■INFORMATION
住所/三好市東祖谷釣井209
交通/井川池田ICから国道32号〜県道45号・32号を剣山方面へ、標示を目印に右折して山道を上る。 所要約1時間20分
営業/見学等の訪問可能
   ※1週間前までに要予約
   ※時間・料金は要問合せ
問合せ/ちいおりトラスト TEL:0883-88-5290
http://www.chiiori.org/
かかしによるユニークな町おこし。一番楽しんでいるのは名頃の人達かも
「かかしの里」
 奥祖谷二重かずら橋にほど近い小さな集落、名頃を訪ねた。ここは最近なにかと話題の「かかしの里」。標高800m、過疎の集落は、今、東祖谷で一番にぎやかなスポットかもしれない。なにしろ、人口が増え続けている。
 そもそもは7年程前、綾野月美さんが得意の人形作りの腕を生かして、カラス追いのために等身大のかかしを作って畑に置いたのが始まり。人間味あふれる仕草やユーモラスな表情が評判になり、かかしの数が増えるにつれてどんどん見物客も増えていった。そこで、東祖谷観光協会や住民グループが協力して、これを観光の目玉として売り出すことに  。名付けて「天空の村 かかしの里プロジェクト」!
 まずはメンバーが集まって、綾野さんの指導のもと、かかし作り。木や針金を軸に、新聞紙を丸めて肉付けし、古着を着せる。これがけっこう大仕事。4〜5人がかりでも1体作るのに3〜4時間かかるとか。でも、作っているうちに愛着がわくのか、
「このコ、1年生にしてはえらい大きいな」
「かずら橋には宮子を連れていこか」
「村長は来週、鳥取へ出張するんじゃ」
と、かかし達はすっかり人間扱い。
 かかしは仕上がると、名頃の住民として「かかし村基本台帳」に登録される。名前、生年月日、親御さん(作成者)、外見的特徴や性格まで記載されたユーモアたっぷりの基本台帳は、「かかしの里バス停」(※ちなみにバスは停まらない)に設置されており、観光客も閲覧できる。
 かかし達は、奥祖谷かずら橋や剣山登山口見ノ越などの観光スポット、国道439号沿いの目立つ場所に常駐して、観光客の目を楽しませている。本来のカラス追いの役目は?
「ほれでも、畑に来るカラスは減っとるし、一応役目はしよるんかも?(笑)」
と綾野さん。取材の時点で
「名頃の人口46人、かかし78体。かかしの方が多いなあ」
と笑っていたが、名頃の皆さんの楽しそうな様子を見ていると、100体を超える日もきっとそう遠くない。



■INFORMATION
住所/三好市東祖谷菅生
交通/JR阿波池田駅から四国交通バス久保行きで1時間50分、久保下車。 市営バスに乗り換え20分、名頃下下車すぐ。
車/井川池田ICから約2時間
問合せ/三好市観光課 TEL:0883-72-7620


◆YOSHINOGAWA NEWS◆

●平成21年度総会を開催しました

 平成21年度吉野川交流推進会議総会を5月29日、ホテル千秋閣で開催しました。多数のご出席のもと、今年度の事業計画等を協議いただきました。左記のように、今年も多岐にわたる事業に取り組んでいきます。
 また、アドプト・プログラムに参加し、2年以上活動を継続し、かつ初めて再度の合意書を締結した団体・企業及び「とくしまマラソン」に向けて清掃活動を行った団体・企業に感謝状を贈呈しました。
 本年度の事業は以下の通りです。


交流事業
◆アドプト・プログラム吉野川の推進・・・・「アドプト完全宣言」実現を目指します。
◆近畿圏の子どもとの交歓事業の実施・・・・夏休みに、近畿圏の小学生とその保護者、県内参加者も交えて、   吉野川で体験イベントを実施
◆地域イベントとの交流事業の実施
◆流域間交流事業の実施
◆吉野川ブック「川はともだち」DVD版・冊子の作成・配布
◆国土交通省との共催事業の実施・・・・水生生物調査、一斉清掃などを通じて環境保全の意識を高めます。
◆インターネットによる交流事業の実施・充実

情報発信事業
◆機関誌「四国三郎吉野川」の発行
◆魅力の再発見事業・・・・吉野川の穴場情報マップを作成し、ホームページに掲載。
◆吉野川イベントガイドの作成・・・・会員からイベント情報を募集し、ホームページから発信。
◆各種イベントで吉野川の魅力をPR
◆ホームページの充実による情報発信
◆吉野川フォトライブラリーの充実・・・・昨年度から募集している著作権フリーのフォトライブラリーを充実させる。

会員の募集
◆イベント等で入会案内を配布し、新規正会員を募集。
次号へ次号へ 前号へ前号へ
Copyright (c) 2002 吉野川交流推進会議 All Right Reserved